『走る詩人』 加澄ひろし

サブフォーを目指さない文化系ランナーの独り言

パリを走る その4

『走る詩人』加澄ひろしです。

 

昨年の秋(2019年9月)、フランスのパリに行ってきました。
4泊滞在のついでに、セーヌ川沿いをランニングしてきましたので、その時の思い出を書きます。長くなりそうなので、数回に分けることにしました。

今回は、その4です。

 

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シャン・ド・マルスを走り終えて約10キロ、後半は、セーヌ川沿いをバスティーユに向けて戻ります。時刻は9時半を過ぎ、通りを行き交う人の数も本格的に増えてきました。行きとは少しルートを変えて、車道沿いの並木道を走ってみたりして、走る気分を盛り上げます。気がつけば、すれ違い、追いかけるランナーの姿も増えています。

 

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オルセーに至るまでのセーヌ川左岸は、絶好のランニングコースです。落ち着いた景色、整備された滑らかな路面と緩やかな起伏、道幅もゆったりとしていて、走ることに集中できます。

速いランナーも遅いランナーも、思い思いのペースで、思う存分にランニングを楽しんでいるのです。僕も、ある時は、黒いシャツに追い越され、青やピンクのシャツを追いかけ、黒い集団とすれ違い、またある時は、おしゃべりしながジョギングするふたりを追い越しながら、今日を走れる喜びに満たされます。


ランナーだけでなく、ゆっくり散歩をする人の姿も見かけます。時の流れはゆったりしているけれど、過ぎていく景色はあっという間でした。

 

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行きに渡ったオルセー美術館の橋を過ぎて次の橋、ロワイヤル橋で右岸に移ります。足の疲れも出始めたので、帰りはなるべく石畳を避けるようにして走ります。
ポン・デ・ザールを過ぎ、ポン・ヌフを過ぎ、シテ島とサンルイ島を右手に見て、サンマルタン運河を目指します。

 

空は少し曇ってきました。陽射しが隠れ、物憂げな雰囲気が辺りを包みます。ランナーの数も減ってきました。景色が光を失い、肌にあたる風が少し寒く感じられます。夏を過ぎ、秋を迎えるパリの季節を、体全体で感じます。

 

サンマルタン運河の入り口に着いた時、走った距離はまだ17キロにもなっていませんでした。僕は、もう少し先までセーヌ川をさかのぼってみようと思いました。

しばらく走ると、左岸のリヨン駅と右岸のオーステルリッツ駅を結ぶシャルル・ド・ゴール橋へと至ります。この近代的な橋は1990年代に建造されたもので、現代的なデザインが特徴です。セーヌを走り、石造りの古風な橋ばかりを見てきた目には、とても新鮮に写ります。

橋のたもとをくぐってしばらく走り、18キロに達したところで折り返すことにしました。丁度良い具合に、その地点で遊歩道が区切られていたのです。

引き返す道は、先ほどよりも、もっともの悲しく感じました。散歩をする人もなく、横の道をクルマがどんどん行き過ぎるだけです。人影もなく、ひとりぼっちで河岸を走っていると、見える景色を寒々と感じます。壁に描かれた落書きも、とても虚ろに感じます。

まだかまだかと坂を上り、サンマルタン運河のほとりに出ると、ふたたび人の数が増えて、僕は元気を取りもどしました。不思議なものです、運河沿いをバスティーユに向かって走っていると、少しずつ陽射しももどってきたのです。人々のざわめきと音楽が、遥かな先から聞こえてきます。

 

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バスティーユ広場にもどった時、距離はちょうど20キロに達していました。
ここまで2時間10分ほど、気持ちよく走れました。最後は、宿まで数百メートル残すだけです。気持ちが高揚し、まだ走る気十分でしたので、終点をボージュ広場にすることにしました。

 

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通りを渡り、入り口の門を抜け、颯爽とした気分で公園に足を踏み入れます。
ラソンランナーがゴールの競技場に至ったような、誇らしい気分になりながら、公園の砂利道を顔を上げて走ります。公園に遊び、公園を楽しむ人々の間を、疲れを忘れて僕は走りました。
一周すると、距離は、ちょうど20.5キロを超えました。僕は満足して、スピードを緩めました。ここがゴールです。息が少し上がっていました。汗をかいていました。

帰って、シャワーを浴びよう!

そう思いながら、僕は、宿まで歩きました。

以上が、僕のパリで走った思い出です。パリを走ったのは、初めての経験でした。日本を発つときから、とても楽しみにしていました。そして実際、とても楽しく走ることができました。

もっと日程が許せば、ブーローニュやヴァンセンヌの森も走ってみたかった。シャンゼリゼアンヴァリッド、サンジェルマンデプレ界隈やリュクサンブール公園だって、走ってみたい思いでいっぱいです。

いつかまた、パリを訪れる時には、ランニングシューズを持って行くことでしょう!

近いうちに、楽しかったパリの 初ラン の想い出を『詩』にしてみるつもりです。

 

※走ったシューズ:NB 1040 v7 

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筆者へのメール:kasumi@tokyo.ffn.ne.jp