『走る詩人』 加澄ひろし

サブフォーを目指さない文化系ランナーの独り言

長田弘詩集 (ハルキ文庫)

『走る詩人』加澄ひろしです。

 

角川春樹事務所から出版されている 長田弘詩集 (ハルキ文庫) を読みました。

 

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この詩集の冒頭にある『最初の質問』をご紹介します。

 

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(以下引用)

 最初の質問

  今日、あなたは空を見上げましたか。空は遠かったで
 すか、近かったですか。雲はどんなかたちをしていまし
 たか。風はどんな匂いがしましたか。あなたにとって、
 いい一日とはどんな一日ですか。「ありがとう」という
 言葉を、今日、あなたは口にしましたか。
  窓の向こう、道の向こうに、何が見えますか。雨の雫
 をいっぱい溜めたクモの巣を見たことがありますか。樫
 の木の下で、あるいは﨔の木の下で、立ちどまったこと
 がありますか。街路樹の木の名を知っていますか。樹木
 を友人だと考えたことがありますか。
  このまえ、川を見つめたのはいつでしたか。砂のうえ
 に坐ったのは、草のうえに坐ったのはいつでしたか。
 「うつくしい」と、あなたがためらわず言えるものは何
 ですか。好きな花を七つ、あげられますか。あなたにと
 って「わたしたち」というのは、誰ですか。
  夜明け前に啼きかわす鳥の声を聴いたことがあります
 か。ゆっくりと暮れてゆく西の空に祈ったことがありま
 すか。何歳のときのじぶんが好きですか。上手に歳をと
 ることができるとおもいますか。世界という言葉で、ま
 ずおもいえがく風景はどんな風景ですか。
  いまあなたがいる場所で、耳を澄ますと、何が聴こえ
 ますか。沈黙はどんな音がしますか。じっと目をつぶる。
 すると、何が見えてきますか。問いと答えと、いまあな
 たにとって必要なのはどっちですか。これだけはしない
 と、心に決めていることがありますか。
  いちばんしたいことは何ですか。人生の材料は何だと
 おもいますか。あなたにとって、あるいはあなたの知ら
 ない人びと、あなたを知らない人びとにとって、幸福っ
 て何だとおもいますか。時代は言葉をないがしろにして
 いる ー あなたは言葉を信じていますか。

(引用以上)

 

何という美しい言葉でしょう。何というやさしい言葉でしょう。心の中にしみ込むように、深く訴えかけてきます。この質問を胸に刻んでおくことを誓いました。この言葉を礎として、詩を書き、生きていきたいと思いました。

 

筆者へのメール: kasumi@tokyo.ffn.ne.jp

 

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