『走る詩人』 加澄ひろし

サブフォーを目指さない文化系ランナーの独り言

【詩】出航

『走る詩人』加澄ひろしです。

年頭の出来事ですが、宮崎日日新聞の文芸欄で募集のあった『新春文芸』に応募し、佳作に選んでいただきました。

 

「出航」

 

埠頭はすでに帳を降ろして

真新しい船底が、赤く照らされている

呼び笛の合図が鋭く響き

口を開けた船腹に、積荷の列が導かれる

 

太い音色の汽笛が鳴ると

艫綱が解かれて、鼓動を高める

煙のしぶきを噴きあげる

 

岸壁のむこうは、漆黒の闇

船出を見送るのは、青い標の点滅だけ

東に向かう夜行船は、波に漂う水蜘蛛だ

黒い海原を、頼る灯もなく小さな舵で

約束された夜明けを信じて

 

行く手に臨む水平線に、朝の光が迸り

明々と、舳先を黄金に照らすだろう

神々しい、日の出の炎を浴びるだろう

ヨーソロー! 希望に続く遥かな道

いざ行かん、明日を目指して

 

©2023  Hiroshi Kasumi

宮崎日日新聞「新春文芸」応募作品(2023.01.03 掲載)

 

同日の紙面に、谷元益男さん(選者)の作品「笹の葉」が掲載されています。自分も、このような美しい詩が書けるようになりたいと思いました。

また、後日、ご高名な杉谷昭人さんからも紙上でお褒めの言葉をいただきました。大変有難く、光栄なことです。よい作品を書けるよう、精進して参ります。