『走る詩人』 加澄ひろし

サブフォーを目指さない文化系ランナーの独り言

【詩】風騒ぐ

『走る詩人』加澄ひろしです。

詩誌『詩人会議』11月号の投稿欄に掲載していただいた作品です。

 

 

「風騒ぐ」

 

風騒ぎ 梢を揺らす
枝に茂る 無数の葉が
吹かれて震えて 躍っている
わたしは その樹の陰に腰かけて
風の行くえを 追いかけている

しずかに 音を立ててそよぐ風
夏にほてる からだを抜けて
木漏れ日のひかりに 揺すられて
生きる幸せに 満たされる

太い枝も 細い小枝も
上下左右に 揺れながら
リズミカルに 幹を揺すって
明日への通り路を 教えてくれる

大きな葉も 小さな葉も
梢の枝を はなれる日まで
萌え出た場所に しがみついて
力いっぱい その手をひろげ
短い命を よろこび歌う

なぜ人は 時を急いで生きるのだろう
翠りの 音色の 波打つすき間に
遠い まなざしを 追いかけて
今を生きる 命の記憶を
海馬の 奥に刻みこみ
流れる時の行く先を みつめている

この風に 何をさがしているのだろう
涼しく撫でる 波打ち際で
おぼろな想いを たどりながら

 

©2022  Hiroshi Kasumi

 

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

これからも、よりよい詩が書けるよう一層精進してまいります。